『風の谷のナウシカ』の謎とその解

『風の谷のナウシカ』は、一見、簡単そうで、実はかなり難しい映画です。前回説明したように、大ババ様の言うことをよく聞けば、基本的なところは全て押さえられるように作られているので、小さな子どもでもわかりますが、詳細な点は小さな子どもの知恵ではわかりません。大人が見ても、理解できない場合は多々あると思います。

そこで、順を追って解説してみたいと思います。

テーマ

前回すでに解説したことですが、この映画のテーマは、「いたわりと友愛」です。愛とかロマンとかは関係ありません。かなりユニークなテーマの映画で、同じテーマの映画を他に見たことがありません。少なくとも、私の記憶にはありません。

よくある誤解としては・・・

1)自然を操る女の子の物語。

2)自然保護の重要性を訴える映画。

・・・などがあります。

映画『風の谷のナウシカ』でナウシカが王蟲を静めるシーン
光玉と蟲笛で王蟲を静めるナウシカ。ですが、これを語るのが目的ではありません。

ナウシカは自然を操っていませんので、1は明らかに違います。2の自然保護は「いたわりと友愛」の結果です。自然を大切にすべきだという思想は、宮崎駿の他の作品にも見られますが、これがこの映画の最も重要なテーマかというと、そうは思えません。

3)伝説の「青き衣をまといて、金色の野に降り立つ」人がナウシカであったと言う物語。

映画館でこんなことを言っている人もいましたが、さすがにこれはゲームのやり過ぎです(笑)。

映画『風の谷のナウシカ』に出てくる「青き衣をまといて、金色の野に降り立つ」と言う伝説の人
「その者、青き衣をまといて、金色の野の降り立つべし・・・」と言う件(くだり)もありますが、味付け(演出)ですね。

ナウシカが撃たれなかった理由

ナウシカは2回機関銃により狙われていますが、撃たれていません。もっとも、最後には弾がかすって、ちょっとけがをしていますが、致命傷には至っていません。なぜ撃たれなかったのか、考えたことがありますか?

ペジテのガンシップが機関銃で掃射しようとナウシカに照準を合わせるシーン
ペジテのガンシップに搭乗するアスベルが機関銃で掃射しようとナウシカに照準を合わせるシーン

映画『風の谷のナウシカ』でアスベルがナウシカを機関銃で撃つシーン
ガンシップのアスベルがナウシカを機関銃で撃ちまくるシーン

王蟲の子どもを運ぶペジテの船がナウシカを機関銃で撃つシーン
王蟲の子どもを運ぶペジテの船がナウシカを機関銃で撃つシーン

映画『風の谷のナウシカ』で王蟲の子ども運ぶペジテの船が機関銃でナウシカを撃つシーン
王蟲の子どもを運ぶペジテの船がナウシカに狙いを定めて機関銃を撃ちまくるシーン

鍵はラステルです。ラステルとナウシカがよく似ています。これがポイントです。

墜落したトルメキアの船の中に発見されたペジテの王妃ラステル
墜落したトルメキアの船の残骸の中に発見されたペジテの王妃ラステル

ナウシカと話をする瀕死のラステル
ナウシカに助けられた後、ナウシカと話をする瀕死のラステル

まず1回目のペジテのガンシップによる銃撃では、ラステルが現れて、阻止しました。この「ラステル」は亡霊なのか、見間違いなのかわかりませんが、ナウシカは着ている服が違うし、手を下に向けて体を支える体勢を取っているので、見間違いというよりも亡霊だという気がします。

アスベルを止めるラステル
アスベルを止めるこの少女はラステルと考えられます。

ナウシカが機関銃で撃たれる前に取っていた姿勢
ナウシカが機関銃で撃たれる前に取っていた姿勢

比べると、姿勢は違うし、衣服も違います。髪の長さもナウシカよりも長いです。そして、ナウシカの後ろは黒煙ですが、アスベルを止めた少女の後ろは燃えさかる炎です。やはりラステルの亡霊と考えるしかありません。

2回目は、王蟲の子ども吊った船からの銃撃ですが、この時はナウシカがラステルに見えて、銃撃ができませんでした。これは、体勢が同じなので、亡霊ではなく、見間違いであるように思えます。

映画『風の谷のナウシカ』でナウシカが両腕を広げてペジテの船に乗り込もうとするシーン
両腕を広げてペジテの船に乗り込もうとするナウシカ

ナウシカを撃つことを拒否するペジテの兵士
この兵士は「いやだ!ラステルさん。」と叫んで、ナウシカを銃撃することを拒否するので、明らかにナウシカをラステルと思い込んだのだと考えられます。

巨神兵を乗せたトルメキアの大型船が墜落した際に、ナウシカがラステルを救って、最後を見届けたことで、ナウシカとラステルのつながりができたような気がします。これがなかったら、ラステルが出てくることはなく、ナウシカは機関銃で撃たれていたかもしれません。

ナウシカがペジテに向かった理由

ナウシカは腐海の底に落ちた翌日、メーヴェを修理し、ペジテに向かい飛びました。その理由がわかっていない人が意外と多いようです。

アスベルとペジテに向かうナウシカ
ナウシカはアスベルと共にペジテに向かいますが、なぜでしょうか?

1)ペジテの人たちと会うために行った。

2)アスベルと行動を共にすることにしたので、ペジテに行った。

・・・と言う様な誤解をしている人が多いです。さすがに・・・

3)ペジテに残るトルメキア軍を殲滅(せんめつ)するためにペジテに行った。

・・・と考える人はいませんが・・・(笑)。

ナウシカがペジテに行ったのは、アスベルを仲間のところに送り届けるためです。

アスベルは、自分の飛行機を撃墜されてしまっています。そのままだと、家に帰ることができません。まさか腐海を歩いて抜け出て、歩いてペジテに帰るなんて無理です。ナウシカが連れて行くしかありません。そこで、ナウシカが連れて行くことになったわけです。そもそも、ナウシカは腐海に落ちたアスベルを救助に来たわけなので、ペジテまで送り届けるのは、自然な成り行きです。

ナウシカがペジテに行った理由は、映画の中では全く触れられていないわけですが、それは、考えれば当たり前のことなので省略されたのだと思います。しかも、物語の展開上、その説明は必須のことではありません。ただ、このペジテへの飛行をアスベルと行動を共にしたからだと解釈すると、この映画を理解する上でおかしなことになってしまいます。

つまり・・・

ナウシカはアスベルと仲良くなり、行動を共にすることになったので、風の谷は放置して、ペジテに向かった。ペジテの残党が発動した作戦に関して対立が生じて、せっかくペジテの仲間になったのに、ナウシカはアスベルと引き離されてしまった。アスベルのことは気がかりだが、自分とは意見の異なるペジテのことは放置して、故郷の風の谷を救うべく、風の谷に向かった。

・・・と言う様な理解になりかねません。これでは別の映画になってしまいます。

ナウシカは、遭難したアスベルを救助して、自宅まで送っただけです。それ以上でもなければ、それ以下でもありません。

ナウシカはペジテの仲間になったわけではないので、そういうしがらみで捉(とら)えてはいけません。

なぜペジテとトルメキアは同じなのか

ナウシカは、「ペジテとトルメキアは同じだ」と主張して、ペジテの生き残りの人たちと対立します。ペジテの生き残りの人たちは、「トルメキアは巨神兵を破壊に使うだけだ」と主張して、自分たちのやろうとしていることがトルメキアと違うことを主張します。では、なぜナウシカは「ペジテとトルメキアは同じだ」と言うのでしょうか?

試験に出ます(笑)。

映画『風の谷のナウシカ』で巨神兵の使用を正当化するペジテ
トルメキアは巨神兵を破壊に使うだけだが、ペジテは巨神兵で世界を救うと主張するペジテの指導者

ペジテもトルメキアも同じだと主張するナウシカ
ペジテもトルメキアも同じだと主張するナウシカ

ナウシカにとって、巨神兵を使って腐海を破壊しようとしている点で、ペジテとトルメキアは同じなのです。ナウシカは、腐海の底に落ちた際に腐海が人間の生存に必要なものであることを認識したため、それを破壊することは許されないと考えています。彼女の頭の中には、腐海が人間の生存を助けていると言う図式しかありません。だから、巨神兵を使って腐海を焼き払おうなどというのは言語道断なのです。その言語道断のことをやろうとしていると言う点で、ペジテとトルメキアは同じなのです。

最後にナウシカがいつの間にか青い服を着ているのはなぜか

最後に風の谷の小さな女の子が「姫姉様、真っ青な異国の服を着ているの。」と言ったときに、ナウシカの着ている服を見ると、青い服を着ています。たぶん、映画を見ている人の大半は、この時になって初めてナウシカの着ている服の色に気がつくと思います。

青い色の衣服をまとうナウシカ
この時、「真っ青な異国の服を着ているの」と言うせりふで初めて、ナウシカが青い服を着ていることに気がつきますが、いったいいつ青い服になったのでしょうか?

ごく一部の人はこの時、「あれ?」と思うようですが、極めて少数のようです。恐らく、ほとんど誰も気がつかず、誰一人、気にもとめません。私も最初は気がつきませんでした。昔、レーザーディスクでこの作品を何度か見た際に「あれ?????」と気がついたのですが、いったい、いつ青い服になったのでしょうか?確かに、ペジテの人たちに助けられた際には、ピンク色の服に着替えています。それがいつの間にが青色になっています。変ですよね。何度もこの映画を見ていると気になってきます。

ナウシカがペジテの少女からピンク色の服をもらうシーン
ここで、ナウシカはペジテの少女からピンク色の服をもらいます。

ガンシップの中で青色の服に着替えたから・・・とか?

「やはり、私は青よね。」と言って、ガンシップの中で青色の服に着替えたのでしょうか?

「前席、前方に注意!」とミトに命じて、そのすきに着替えたのかもしれません。

ガンシップの後席に座るナウシカ
ここで密かに青い服に着替えたとか?

さすがに違います。

まず、映画を巻き戻すと、王蟲にはね飛ばされる前は、青い服を着ています。

王蟲に吹っ飛ばされる前のナウシカ
王蟲に吹っ飛ばされる前のナウシカですが、着ている服はすでに青いですね。

しかし、ペジテのブリッグ脱出時はピンクです。

ピンクの服を着ているナウシカ
ナウシカは、ペジテのブリッグを脱出する際には、確かにピンクの服を着ています。

そして、王蟲の子どもつり下げた船に突入するシーンでもピンクの服を着ています。この辺は印象的なので、みなさん覚えていることでしょう。そうなると、この間のどこかで青色になったのに違いありません。

映画『風の谷のナウシカ』でナウシカが両腕を広げてペジテの船に乗り込もうとするシーン
ナウシカが両腕を広げて、ペジテの船に飛び込むシーン

記憶をたどると、ナウシカが機関銃を持っているシーンがあり、このシーンも印象的なので覚えていると思いますが、青色の服を着ています。

ペジテの兵士を機関銃で脅すナウシカ
ここでは青いですね。

墜落後、よろめきながら歩くナウシカ
ちょっとさかのぼって、墜落直後です。ナウシカはよろめきながら歩いています。服はピンク色です。

そこで王蟲の子どもつり下げた船が墜落してから、ナウシカが機関銃を手にするシーンの間のどこかで服が青色になったと考えるしかありません。そこでそのシーンを注意深く見ると、実は、王蟲の体液がピンク色の服にしみこんで、青色に変わっていくことに気がつきます。これですね。

ナウシカの服が青くなる瞬間その1
酸の海に入ろうとする王蟲の子どもを止めようとするナウシカ。王蟲の子どもの体から吹き出す体液がナウシカの服にしみこみます。

ナウシカの服が青くなる瞬間その2

ナウシカの服が青くなる瞬間その3

ナウシカの服が青くなる瞬間その4

ナウシカの服が青くなる瞬間その5

ナウシカの服が青くなる瞬間その6

ナウシカの服が青くなる瞬間その7、完全に青くなっている
ナウシカの服は、もう完全に真っ青に染まっています。

ナウシカの服の色がいつの間にかピンクから青色に変わるのは、宮崎駿が仕掛けた巧みなどんでん返しです。

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